昨年11月28日に「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」が公布され、本年4月1日から施行されます。
労働契約法18条では、有期契約労働者(いわゆる「契約社員」)の雇用契約期間が通算5年を超えた場合、その社員が「期間の定めのない雇用契約にしたい」と申し出れば、無期労働契約に転換するという「無期転換権」を定めています。
冒頭の特別措置法は、一定の条件を満たした場合に、この無期転換権が発生するまでの期間に特例を設ける内容の法律です。
対象となる労働者は、以下の2類型です。
①一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する有期契約労働者
②定年後に同一の事業主またはこの事業主と一体となって高年齢者の雇用を確保する事業者に引き続き雇用される高年齢者
ここでは、①をプロジェクト型と呼びますが、プロジェクト型は、期間限定のプロジェクトが完了するまでは無期転換権が発生しないことになります(但し、上限は10年です。)。
②の継続雇用型は、定年後に引き続き雇用されている期間は、労働契約法18条の「通算5年」という期間から除外されることになります。
つまり、定年後雇用の場合は、有期雇用契約が通算5年となっても無期転換権は発生しないことになります。
①のプロジェクト型の定めは、東京オリンピックの開催も一つの契機になっています。
東京オリンピックが開催されることで、それまでの期間限定プロジェクトが増えることが予想されますが、有期労働者の契約期間が通算5年を超えるとプロジェクト完了に関わらず無期転換してしまうので困る、一方、無期転換させないように5年を超えない期間で辞めてもらおうと思ったら、当該労働者はオリンピック前に辞めることになり、それまで当該労働者が培ったノウハウ等が無駄になってしまって困る、だから無期転換権発生までの期間を調整しよう、というわけです。
(オリンピックはあくまで一例で挙げられただけあって、オリンピックとは関係のない新規事業立ち上げ大型資源プロジェクト等も想定されており、全体として産業を活性化をさせようというのが狙いのようです。)
②の継続雇用型については、定年後の再雇用措置として有期契約の更新を繰り返す形態を取っている企業が多いのですが、有能だからといって通算5年を超えて勤務してもらうと無期転換権を行使されて本当の終身雇用になりかねない、一方、65歳になっても大いに企業に貢献できる人材はいますので、定年後、5年を超えない期間で雇止めにしてしまうのは、労働力人口が減少している我が国にとっては損失である、という考えが背景にあります。
本ブログでは数回にわたって、この特別措置法についての解説をしたいと思います。
続きは次回のブログに掲載します。
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・契約社員の解雇
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